「また性懲りもなく、こんなモノ始めたのね。」

僕のパソコンモニタを見て、アリスが呆れたように言った。

「こんなモノとは失礼だな。趣味でやってることなんだから放っといてくれよ。」

ちょっとムッとした口調で僕は言い返した。でも実際はそれほど怒ってはいない。彼女のこういう反応は想定していたことだったからだ。

「だって、どうせまたしばらく経ったら怠けて放置して、いつの間にか忘れてしまうのが目に見えているもの。以前にホームページを作った時も、ブログ始めた時も、最初は調子よく更新していたくせに、何ヶ月か経ったら放ったらかしになったじゃないの。」

「いや、でも続いているものだってあるよ。twitterだって家計簿だって、もう何年も続けてる。それに、以前のホームページやブログだって、3日坊主っていうほど続かなかったわけじゃないし……」

僕はとっさに反論するが、苦し紛れなのは分かっているつもりだ。

「はいはい。ま、いつまで続くのか楽しみにしておくわ。どうせ、載せる作品のストックだって、ロクにないんでしょ?」

「痛いとこ突くね。ああ、その通りだよ。でも、そもそも趣味でやってることなんだから良いじゃないか。気分が乗れば続くだろうし、飽きたら止める。ただそれだけのことだ。偉そうなこと言ってるけど、君だって飽きっぽいところあるじゃない。」

「そうね。でも、あなたよりは私の方が根性あると思うわ。」

「例えば?」

「例えば、そうね。……フフッ……いや、これは言わぬが華というものだわ。」

「また、意味の分からないことを言ってはぐらかす。」

「分からないことにこそ、意味があるのよ。そう思わない?」

「何の話だよ。」

「まあ、頑張ってねっていう話。次の更新、期待しておくわ。」

アリスはそう言い残すと、意味ありげな笑みを浮かべて部屋を出て行った。僕は狐につままれたような顔でそれを見ていたが、まあ良いやと気を取り直して、パソコン作業を再開する。

窓の外では先程まで降り続いていた雨が止み、空が明るくなりつつあった。きっと午後には晴れるだろう。もしかしたら、虹が出るかもしれない。

(2015年6月25日執筆・初掲載)